ウェブメディアMEDIAPARTに記事掲載(ムクウェゲ医師への脅迫に関して)

RITA-Congoの共同代表・米川が執筆した記事が、ウェブメディアMEDIAPARTに掲載されました(2020年8月23日)。以下は記事の日本語概要です。


―――

コンゴ民主共和国の婦人科医・人権活動家であり、2018 年のノーベル平和賞を受賞したデニ・ムクウェゲ医師が、この数週間、殺害の脅迫に何度もさらされています。 こうした脅迫を受けて、8月13日には国際NGO国際人権連盟が、さらに、8月17日には米NGO人権のための医師団(PHR)が、ルワンダ元防衛大臣のジェームス・カバレベ氏がルワンダ国営放送でムクウェゲ医師を非難したことに触れ、声明を発出しました。8月20日には、駐コンゴのアメリカ大使が、同医師に対するルワンダ国軍の殺害脅迫は「到底受け入れられない」と発表し、日本においても弊団体が声明を発出しました。

ムクウェゲ医師は、コンゴ東部で最近急増している暴力を非難すると同時に、この数年、2010 年に公表された国連マッピング報告書で推奨された正義の実現を求めてきました。今回の脅迫は、こうした医師の努力を妨害する目的で行われているようです。


上述のPHRによる声明を受けて、KT Pressは 「嘘を暴く:カバレベはノーベル平和賞受賞者ムクウェゲ医師を脅迫したのか?」と題したオンライン記事を発表しました。この記事とカバレベが出演したテレビ番組(7月18日放送)によると、カバレベは国連マッピング報告書について以下のように言及しました。


1)そもそもルワンダ軍がコンゴに侵攻して人々を殺害したのは事実ではなく、(1994年の)解放闘争において敗北した人々がその罪悪感から流布したプロパガンダである

2)このネガティブプロパガンダこそが、コンゴで600万人が殺害されたと根拠なく主張した国連マッピング報告書へとつながり、ムクウェゲ医師は、コンゴや他のアフリカ諸国の難民キャンプにルワンダ難民を捕虜として留めておくという利害関係を持った人々(プロパガンダを流布した人々やその他NGO)に利用されている 

3)国連マッピング報告書は、コンゴや他のアフリカ諸国に若いルワンダ難民を捕虜として留めておくためのプロパガンダである。ルワンダ国内に迫害を受ける恐れがもはや存在しないために、ルワンダ難民の地位は2017年12月に終了した。それにもかかわらず、いまだ多くの難民が難民受け入れ国にとどまっていることこそがその証拠である。


[ルワンダ難民に関する議論は省略]


そもそも、国連マッピング報告書は、2005年に国連PKO要員がコンゴ東部において3つの巨大墓地を発見したことに発端があります。2010年8月にマッピング報告書草案がリークされた際、ルワンダ政府は、ルワンダ国軍がマッピング報告書に記録されている最も重要な犯罪に関与したとされていることを受けて、怒りを示しました。ルワンダは、もし国連が同報告書を公表した場合、同国は国連PKOから撤退すると脅迫し、その直後には、国連事務総長がルワンダ政府の見解を聞くために突然ルワンダを訪れました。このミーティングの結果は公表されていませんが、ただ明らかなことは2010年10月1日に国連がマッピング報告書を公表したにもかかわらず、その後、この件については一切触れていないことです。


国連が10年にもわたりマッピング報告書について沈黙を保ってきたという事実に鑑みると、この不正義を終わらせるために、ムクウェゲ医師が国際社会に対してマッピング報告書に記載されている推奨(混合法廷の設立)を実行に移すよう訴えるのはごく当然のことです。ムクウェゲ医師自身もコンゴ東部における残虐な行為を目撃し、数え切れないほどの性的テロリズムの被害者を治療してきました。国際的な動きをみると、ユーゴスラビアとルワンダにおける武力紛争の犯罪を調査するため、1990年代に初めて国際裁判所が設立されたことはよく知られています。その後、2002年に国連によるシエラレオネ特別法廷、2006年にカンボジア特別法法廷、2007年にレバノン特別法廷、2015年にはコソヴォ専門家会議所と専門検察庁が設立されました。こうした前例があるにもかかわらず、600万人以上が死亡し第二次世界大戦以降最大規模の紛争が起きたコンゴに関して、なぜ国際社会は同様の措置を取らないのでしょうか。


ルワンダが、ムクウェゲ医師などへの脅迫を止め、大湖地域の平和と安全実現のために真実と正義と向き合うことを強く求めます。


国連マッピング報告書の要約の和訳はこちらをご覧ください。